管理者ブログリレー③

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管理者ブログリレー③

~施設と地域のあいだで~

 

明石市障害者就労・生活支援センターあくと

相談支援事業所オアシス

管理者 鳥居健一

 

 

「障害のある人もない人も、誰もが住みやすい街に」・・・今、こうした理念のもと、各地で障害者の地域生活を考える研修やセミナーが開かれています。そして、ここ明石市においては、全国に先駆けて福祉や子育ての分野において様々な条例が制定され、全国から注目を浴びています。しかし、私がこうして思うことに共感される方はまだ少ないという事も実感しています。花に例えるなら、種を撒き水をあげ芽が出てきた、まだそんなところなのかもしれません。

今回、「管理者の想いを伝える」というお題をいただきましたので、この機会に明石市を主なフィールドして活動している「あくと」「オアシス」の管理者として施設と地域の間で想う事を改めてお伝えしようと思います。

 

もう15年以上も前の話です。明桜会が持つ施設と言えば大地の家しかなかった当時、入所施設の持つ機能はその施設に入所している人のためだけにあるのではなく、地域で暮らす人たちにも積極的に還元していくべきだという考えに基づいて、平成13年に相談支援事業所オアシス(当時は地域支援課)が開所し現在に至っています。この事業を私が担当した当初は、生活介護事業所も就労継続支援事業所も就労移行支援事業所もグループホームもありませんでした。そんな中、決まって通って来るわけでもない地域の方に一体何を提供するのか?在宅の方が求めていることは何なのか?自分は誰に何をするのか?明確な答えがないまま、とにかく地域の困りごとを教えてもらえるように地域のイベントには顔を出そう。言いにくいプライバシーに関することを聞く以上は「この人に相談すれば何とかなる!」そう思ってもらえるようにとことん付き合おう。また、職員の皆さんには「地域福祉は施設の余力で行うのではなく本来の事業として行うもの!」と思ってもらえるようにしよう・・・そんなことを考えながら、相談員としてスタートしました。

 

当時、大地の家しか知らなかった私にとっては、地域の方からの相談は刺激的でした。「障害の診断を受けたんだけど、わが子に合う療育方法を教えてほしい」「騙されたお金を取り戻したい」「親が入院することになったけど、このまま家で暮らし続けたい。私の暮らしを支えてほしい・・・」サービスと言えばショートスティくらいしかなかった時代において、「わかりません。できません。入所施設しかないです。」と言わずに活動して来られたのは、明桜会で働く皆さんが「どうすればこの人が地域で暮らし続けられるか?」「そのために何ができるか?」を一緒に考えてくれたからこそであり、その繰り返しが現在の「あくと」「オアシス」の礎になっています。

 

当法人が様々な事業を展開してきた背景も同じではないかと思います。「目の前に居るこの人が必要としているものは何か?」を考えることで、自分が誰に何をするかが見えてきます。そのことを実現するうえで地域に足りないものがあれば新たに創るという発想につながります。そして、その想いは法人の職員のみならず地域の中にも共感してくれる方は必ずいます。そうして地域とのつながりやネットワークも出来てきます。

 

ここ明石に明桜会が誕生して20年が過ぎました。この間、就職を目指す方たちの事業所、働き続けることをサポートする事業所、高齢になっても医療的ケアが必要になっても住み続けられるグループホーム、在宅の方が緊急時に利用できるショートスティ・・・など、それぞれのニーズに応じたサービスや事業を展開してきました。これは、職員一人一人が「遠くの誰かの話」ではなく、「目の前に居るこの人の暮らし」を我が事として捉え、真剣に考えてきたからこそ実現したのだろうと思っています。

 

明石市が福祉や子育ての分野で注目を浴びるようなってきた背景には、私たち明桜会で働く職員が“障害のある人が生まれた街で住み続けられるように”・・・と、行政や地域の方と一緒に街づくりを考えてきたという部分も少なからずあると思います。もしかすると、職員の皆さんはそんな実感はあまりないかもしれませんが、地域で活動している私から見ると、そのように感じる機会はとても多いです。この先、制度は変わっても変わっていかない、変えてはいけないことの一つだと思っています。

 

相談支援事業所オアシスが開所した当初は「一人暮らしをしてみたい」と言う人に「わがまま・無理言わないで」と言わざる得ない事もあったかもしれません。しかし、たくさんのヘルパー事業所が立ち並びこれだけサービスが充実してくると、むしろニーズをいかにキャッチできるか?という私たちのセンスやスキルが問われるようになりました。「施設と地域・・・」働く場所は違っても、明桜会の職員として大事な部分はこれからも共感していけるように、私も、あくとも、オアシスも目の前のご利用者のニーズには常にアンテナをたて、創造性を持って地域をデザインしていきたいと思います。